その傍で本を読むのは

読んだ本の感想とか、小学校での読み聞かせのこととか。
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「温かな手」 石持浅海

石持 浅海
東京創元社
¥ 1,470
(2007-12)

JUGEMテーマ:読書

内容(「BOOK」データベースより)

大学の研究室に勤める畑寛子の同居人・ギンちゃんは名探偵。サラリーマンの北西匠の同居人・ムーちゃんも名探偵。人間離れした二人は、彼らが遭遇した殺人事件や騒動を、鮮やかに解き明かす!一風変わった名探偵とそのパートナーが活躍する、著者渾身の連作集。


石持氏の作品はいくつか読んだけれど、今までの印象はというと、「そこそこ面白くて読みやすく、続きは気になるけど、なんだか薄っぺらい」といったものだった(すみません)。
ところが、「まっすぐ進め」でんん?印象変わった?と感じた。
そしてそれは今作でも。
うんうん、こっちの方がずっといいと思う。
私の中では、同じ作者さんとは感じられないほど、違う。
「扉は閉ざされたまま」とか、「月の扉」とかとはね。

人間の生命力を吸って生きている、ギンちゃんとムーちゃん。
作品によって探偵役が違うし、もう一人が登場もしないのはなぜ?
人間ではないから、恋愛対象にはならないって言いながら、精神的にはすごく依存してるように見えるけど、将来的には大丈夫?
などという引っ掛かりが、ちゃんと解消されるようになっていたのがよかった。

もっと石持さんの作品を読んでみようっと。
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「ゴールデンスランバー」 伊坂幸太郎

伊坂 幸太郎
新潮社
¥ 1,680
(2007-11-29)

JUGEMテーマ:小説全般
私は伊坂作品はあまり得意ではない。
でもどうも世間では人気があるようだ。
図書館でも常にかなりの本が貸出し中だし、アマゾンでも評価が高いし、いろんな読書ブログさんでも好意的な記事をよく拝見する。
だったら、私ももっと楽しみたい。
という思いがあり、何度も挑戦してきた。

今まで読んだのは
「グラスホッパー」
「チルドレン」
「魔王」
「終末のフール」
「アヒルと鴨のコインロッカー」

「グラスホッパー」は、私には難解だった。
どこが面白いのかよく分からず、誰か教えてという気持ち。

「チルドレン」はかなり読みやすく、これが「グラスホッパー」を書いた人?と驚く。
初めて伊坂作品に触れる人は、このあたりがいいのではないかと感じた。

「魔王」。これは衝撃だった。とにかく怖い。
「チルドレン」を軽い感じで書いた人が、こんな小説も書くとは。

「終末のフール」、「アヒルと鴨のコインロッカー」は、どちらもそれなりに楽しめた。

「BOOK」データベースより引用
仙台で金田首相の凱旋パレードが行われている、ちょうどその時、青柳雅春は、旧友の森田森吾に、何年かぶりで呼び出されていた。昔話をしたいわけでもないようで、森田の様子はどこかおかしい。訝る青柳に、森田は「おまえは、陥れられている。今も、その最中だ」「金田はパレード中に暗殺される」「逃げろ!オズワルドにされるぞ」と、鬼気迫る調子で訴えた。と、遠くで爆音がし、折しも現れた警官は、青柳に向かって拳銃を構えた―。精緻極まる伏線、忘れがたい会話、構築度の高い物語世界―、伊坂幸太郎のエッセンスを濃密にちりばめた、現時点での集大成。

そして今回の「ゴールデンスランバー」。
今まで読んできた中では、私にとっては「魔王」近い存在の小説だった。
とにかく怖い。
あまりの怖さに、途中斜め読みしてしまった。
直接投票で首相を選出する、現実の日本とは違う世界が舞台。
そこで、首相暗殺の濡れ衣を着せられる主人公、青柳雅春。
ものすごく周到に、ずっと以前からその計画は練られ、あらゆることが青柳が犯人だと指し示していた。
絶望的な状況のなか、大学時代の仲間達や少数の協力者が現れ、青柳は逃げる。

「何か」「とてつもない力を持った組織」が青柳を追い詰めて行く。
「それ」が「何」なのかということは、この小説ではあまり意味を持たない。
何か分からない大きなものに追いかけられる、陥れられることの恐怖が重要。
なぜか青柳からはそれほどの恐怖は感じないんだけど(笑)、私は非常に恐怖を感じた。ええ、とても。
その、青柳から恐怖感とか追いつめられ感をあまり受けない部分が、この小説を読みやすくしてるのでは。
賛否両論あるところでしょう。
ラストと同じく。
私は、このラストは有りだと思った。
ただ、「ミステリ」ではない。
「ミステリ」だと思って読んでいたら、やっぱり消化不良というか納得いかないと思う。
なんで「このミス」で1位なの?どこに謎とその解明があったの?
謎はいろいろあったけど、解き明かされなかったよね。
小説としてそれはあると思うけど、ミステリだとしたら、それはない。
そんなミステリは読みたくない。私は。
だから、ミステリとして読まないでと言いたい。
そうすれば、楽しめる(いや、ドキドキしすぎて楽しめないかも)。

そして話題の第三部。
書いたのはアノ人か、それともアノ人かと言われていますが、私としては青柳に1票。(反転ネタバレ)

好きなエピソードは、痴漢が大嫌いな青柳の父が、書初めの宿題に「痴漢は死ね」と書かせた話。
それだけでもおかしいのに、ラストにまた持ってくるとは憎い。
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「キサトア」 小路幸也

小路 幸也
理論社
¥ 1,575
(2006-06)

JUGEMテーマ:読書
 内容(「BOOK」データベースより)
色を失くした僕と、時間を失くした妹たちが海辺の町をかけめぐる日々。僕らの心の中にある、世界のほとりの物語。

キサとトアは、アーチの双子の妹。
父さんは<風のエキスパート>。
母さんはこの町に来る前に病気で死んでしまった。
キサは、朝陽が昇り始めると同時に目を覚まして、トアは同時に眠り始める。
トアは、夕陽が沈み始めると同時に目を覚まして、キサは同時に眠り始める。
僕、ことアーチは、色が分からない芸術家。
生まれた時からではなく、少しずつ少しずつ分からなくなっていった。
でもそんなアーチの作ったものは、『信じられないぐらいの造形のセンスと奇跡としか言いようのない色づかい』らしい。

キサとトアは町の人たちに愛されていて、夜しか起きていられないトアのために、いろんな人がやって来て相手をしてくれる。


なんだかジブリのアニメのような物語。
『魔女の宅急便』や『紅の豚』のような、海に近くて、あまり現代的ではない町の姿が思い浮かぶからかな。
映像として、視覚で捉えることができたら綺麗だろうな、と思った。
もちろん文字で読んでも素敵だった。

最初は、町の人々があまりにもポツポツと次々に登場するので覚えきれなくて、ちょっと入り込みにくかった。
けれど進むにつれそんなことは気にならなくなって、<マッチタワーコンクール>のくだりでは、作品世界に没頭。

読後感もとてもよい。
私の通う図書館では児童書のコーナーにあったけど(理論社から出てるし)、大人の方がより心に響くものがあるかもしれない、と感じる物語だった。

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「塩の街」 有川浩

有川 浩
メディアワークス
¥ 1,680
(2007-06)

JUGEMテーマ:読書
 
出版社 / 著者からの内容紹介
 塩が世界を埋め尽くす塩害の時代。塩は着々と街を飲み込み、社会を崩壊させようとしていた。その崩壊寸前の東京で暮らす男と少女。男の名は秋庭、少女の名は真奈。静かに暮らす二人の前を、さまざまな人々が行き過ぎる。あるときは穏やかに、あるときは烈しく、あるときは浅ましく。それを見送りながら、二人の中で何かが変わり始めていた……。
 第10回電撃大賞<大賞>受賞作にて有川浩のデビュー作でもある『塩の街』が、本編大幅改稿、番外編短編四篇を加えた大ボリュームでハードカバー単行本として刊行される。

デビュー作から、もう有川浩テイスト全開だったのだなぁ。
世界観は、新井素子『ひとめあなたに・・・』や、伊坂幸太郎『終末のフール』的な感じ。
塩は街を飲み込むだけではなく、人をも蝕んでいた。
肌から塩を吹き始めると、近いうちに人間も塩の結晶となってしまう。

設定をうまくいかしたストーリー展開に、もちろんベタベタなラブストーリーが絡んでいく。
図書館戦争に通じていく部分は、あちこちに感じられる。

面白かったし、番外編やその後など、読み応えは充分。
でもなぜか、細かく感想を書く気持ちになれなかった。
なので今回はここまで。
読んで損はないです。
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「私立探偵・麻生龍太郎」 柴田よしき

柴田 よしき
角川グループパブリッシング
¥ 1,890
(2009-02-28)

JUGEMテーマ:読書
私は読むはしから内容を忘れてしまうことが多々あり、そのおかげでミステリだって何度も楽しめるお得な体質だ。
けれど、間を空けてシリーズ物を読むと、はてな?と思うことばかりで楽しめないというオチがついている。
そんなわけで「私立探偵・麻生龍太郎」は、首をかしげなが読むことに。 


内容(「BOOK」データベースより)
春日組大幹部の殺害事件が解決した後、警察を辞めた麻生龍太郎。彼は私立探偵として新たな道を歩み始めた。麻生は、裏社会で生きようとする美貌の男・山内練に対して引き起こした罪を背負い、全てを捧げることを誓う。その麻生の想いに呼応するかのように、今日も人々の切実な依頼と事件が次々と舞い込んでくる…。傑作の呼び声高い『聖なる黒夜』の“その後”を描いた麻生と山内の物語がついに明らかに。そして警察小説の金字塔「RIKO」シリーズ『聖母の深き淵』『月神の浅き夢』へとつながる心揺さぶる連作ミステリ。


時系列的には
 所轄刑事・麻生龍太郎
 聖なる黒夜
 私立探偵・麻生龍太郎
 聖母(マドンナ)の深き淵
 月神(ダイアナ)の浅き夢
となるようです。

「所轄刑事・・・」の時には、大学時代から続いていた及川との関係の終焉が仄めかされていた。
そして今度の「私立探偵・・・・」では、練との。
「所轄刑事・・・」ラスト近くで感じさせられる、麻生の破滅への予感は、今度はそれほど感じない。
その代わり、お互い相手を想いながらも近づけない練との関係が、切ない。


あんたのその、ものぐささって、けっこう人を傷つけるんじゃない?あんたはただ面倒なだけなのかも知れないけど、なあ、恋愛ってのは対等なもんだろ?少なくとも、俺とあんたとは、対等なんだろ?違うの?

これってつまり、練は傷ついている。そういうこと。
それを伝えたってことは、練にしてみれば、すごく心を開いてるってことなのに。
でも龍太郎はそこまで思い至っていない。
二人は『恋愛』してるのに。
二人ともそれを認めて自覚してるのに。

お互い愛し合っていても、相容れない関係ってあるんだな。
きっと龍太郎と練はそんな二人。


という感じに、ミステリの内容ではなく、龍太郎と練の関係についてのみ、思い巡らせてしまいました。
シリーズファンなら、こういう読み方をしてしまうでしょう。
事件の方は、相変わらず嫌ーな感じの話です。
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「文学賞メッタ斬り!」 大森望 豊崎由美

大森 望,豊崎 由美
筑摩書房
¥ 777
(2008-01-09)

JUGEMテーマ:読書
 出版社/著者からの内容紹介
業界騒然!読書家待望! 小説が100倍楽しくなる痛快文学賞ガイド

文学賞ってなによ? 芥川賞・直木賞から、話題のホラー小説大賞、メフィスト賞、ファンタジーノベル大賞まで、50を越える国内小説賞について、稀代の読書家大森望・豊崎由美の二人がアンタッチャブル徹底討論!
WEBマガジン「エキサイトブックス」で一大センセーションを巻き起こした掟破りの言いたい放題がさらにパワーアップ。
最新受賞作全採点「文学賞の値うち」付き。
読む前に、読むべし!


内容(「BOOK」データベースより)
文学賞ってなに?芥川賞・直木賞から、話題のホラー小説大賞、メフィスト賞、ファンタジーノベル大賞まで、50を越える国内小説賞について、稀代の読書家二人がアンタッチャブル徹底討論!WEBマガジン「エキサイトブックス」で一大センセーションを巻き起こした掟破りの言いたい放題がさらにパワーアップ。

再読。
基本的に、芥川賞も直木賞も、文学賞というものに興味がない。
けれどこの本は楽しめる。再読しても面白い。
毒を楽しめない人には向いていないと思うが。

あまりのケナしっぷりに、かえって読みたくなってしまったり。
選考委員の先生方のエピソードも楽しく、著作を読んでみようという気になる。

特に好きなのは、『バトル・ロワイヤル』について、ぜひ津本陽先生にも読んでほしいというところ。
大森 「これは、たくさん人が死ぬ小説である」
豊崎 「なぜかよくわからないが、死ぬのである」
大森 「ちょっと死にすぎなのではないか、と思った」(笑)。

round4の『選考委員と選評を斬る!』が一番好き。
宮本輝のくだりが、かなりおかしい。
挙がっている小説は未読のものばかりなのに、こんなに楽しめるとは。
そして理想の選考委員会というの考える大森さんと豊崎さん。
ツモ爺こと津本陽、津本陽の代わりに読んであげて説明もしてあげられる人として島田雅彦。
でも津本さんは「そんなふうに島田君から色々なレクチャーは受けたが、私にはわからないものはわからないのである」とか書いちゃいそうで、想像するだにかわいい(笑)。
だそうですよ。
それから仲良し世代の島田雅彦、奥泉光、山田詠美。
そこで固まるとあまり対立しないから、宮本輝先生。
抵抗勢力として、ワケワカランチンなことを主張し続けてほしいです。テルちゃんは「輝さんはマジで怒っている」って毎回毎回言われるの。

あと忘れてはいけないのは、『下半身のご意見番』渡辺淳一先生(笑)。
天童荒太の『永遠の仔』を、
はっきりいって、この程度のことを書くために、これだけの長さが必要であったのか、拍子抜けの感は否めない
と選評で書いて、豊崎さんを怒らしてます。
じゃあ、じぶんの『失楽園』はどーだっつーの、あんなもんこそ削りに削って一巻本にせえっつーの!
確かに、『永遠の仔』と『失楽園』のテーマの違い、重さを考えると・・・・ねえ?

自分の好きな作品も低評価だったりするけれど、私はそれでも楽しめて好きです。
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「悪人」 吉田修一

吉田 修一
朝日新聞社
¥ 1,890
(2007-04-06)

JUGEMテーマ:読書
 
内容紹介
なぜ、もっと早くに出会わなかったのだろう――携帯サイトで知り合った女性を殺害した一人の男。再び彼は別の女性と共に逃避行に及ぶ。二人は互いの姿に何を見たのか? 残された家族や友人たちの思い、そして、揺れ動く二人の純愛劇。一つの事件の背景にある、様々な関係者たちの感情を静謐な筆致で描いた渾身の傑作長編。

内容(「BOOK」データベースより)
保険外交員の女が殺害された。捜査線上に浮かぶ男。彼と出会ったもう一人の女。加害者と被害者、それぞれの家族たち。群像劇は、逃亡劇から純愛劇へ。なぜ、事件は起きたのか?なぜ、二人は逃げ続けるのか?そして、悪人とはいったい誰なのか。


私は「容疑者Xの献身」に特に感動したりしなかったし、純愛の物語とも思わなかったんだけど。
純愛っていったら、こっち「悪人」の方に強く感じた。

新聞連載だったそうで、なるほど、連載っぽい書き方だ。
いろんな登場人物に語らせているところ、人間の嫌な部分を上手に描いているところなど、宮部みゆきを思い出す。
でも途中までは、読むのをやめちゃおうかな、と何度か思った。
第一章は、読んでいて不愉快だったから。
殺されてしまった保険外交員の佳乃が、なんともいけ好かない女なのだ。
会社の同僚との、女同士の人間関係とか、もうなんか・・・・何が楽しんだろうっていう、見栄や嘘で固めたような友だちづきあい。
だから殺されてもいいわけじゃないけど、とにかくこの嫌な女にお付き合いしなくちゃいけなかった第一章はつらかった。
多分新聞連載で読んでいたら、ギブアップしたんじゃないかな。

悪人。
悪人とは誰なのだろう。
殺人を犯したことは罪だ。
けれど、本当の悪人は、彼以外の人物じゃないのだろうか。
人を殺した彼より、殺された女、その女性を峠に置いていった男、人間的には彼らの方が問題があるのではないだろうか。

最初はつかみ所がなく、ちょっと不気味に思えた犯人の彼だが、とことん不器用で人との接し方を知らなかっただけで、悪い人間ではなかったのではないのか。
けれど最後に、これだけ周囲の人のことを考えて行動した彼と、人との接し方が分からない不気味ですらあった彼が、本当に同じ人物だろうかと思わなくもない。
ストーリー的には感動的であったけれど、そこまでできる?あの彼に?と思うところもあるんだよなぁ。

スッキリとはしないけれど、切なさのあるいいラストだった。
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Re−born はじまりの一歩

伊坂 幸太郎,瀬尾 まいこ,豊島 ミホ,中島 京子,平山 瑞穂,福田 栄一,宮下 奈都
実業之日本社
¥ 1,470
(2008-03-19)

JUGEMテーマ:読書
 
内容(「BOOK」データベースより)
迷い、揺れ、苦しみながら選びとった、これがわたしの生きる道―。時代を鮮やかに切り取りつづける7人の作家が描く、新たな出会いと出発の物語。オール書き下ろし&オリジナルの珠玉アンソロジー。



宮下奈都/「よろこびの歌」
有名なヴァイオリニストを母に持つ玲は、音大付属高校の受験に失敗し、望んでいなかった普通高校に進学する。
合唱コンクールで指揮することになった玲だが、クラスは全くまとまらず、何も残らなかった。
・・・と思ったが、後日行われたマラソン大会で最下位になった玲がグラウンドに入ると・・・・。

とことん後ろ向きな高校生活を送る玲に、どうしても苛立ちを覚えた。
けれど有名なヴァイオリニストである母からかつて言われた言葉などを考えれば、玲のようになってしまうのは仕方がないかもしれない。
才能がある人の言葉って残酷。
ラストは清々しい。
きっと玲も変わることができたのではないだろうか。


福田栄一/「あの日の二十メートル」
克彦はこの春に大学に入学したばかりだが、六月末の今はもうキャンパスへ顔を出すことすらない。
その代わりに毎日プールに通っている。
そのプールで知り合った老人から、泳ぎを教えて欲しいと頼まれる。
しかしその老人は実は心臓が悪かったのだ・・・・

最後、か老人の孫の女の子と克彦がいい雰囲気(?)になったところは余計だった気がする。
でも無理してでも泳げるようになって、長年胸につかえていた後悔がなくなった老人の話は、とてもよかった。


瀬尾まいこ/「ゴーストライター」
モテる兄貴へのラブレターの代筆を頼まれたコウスケ。
兄とは仲が悪い。
父の店、戸村飯店を一切手伝わず、兄は東京へ出て行く。小説家になると言う。
小学生の頃から兄は文才があり、中学生から友人たちの作文を引き受けてゴーストライターをしていた。

コウスケに代筆を頼んだ女子・岡野にイラついた。
ラブレターは自分で書けよ、と。
兄とコウスケは本当にずっと仲が悪かったようで、こういう家族や兄弟も、現実にいそうだ。
店を手伝わないで勝手をしている感じなのはなんだかな〜と思ったが、家族で一人だけ「何か違う」という疎外感が常にあったのだとしたら、仕方がなかったのかもしれない。
自分の生まれた場所に、自分が存在する場所に、合わないのは、どんな気持ちだろうか。
ラストは案外爽やか。
瀬尾さんがこういう話を書くとは思わなかった。

中島京子/「コワリョーフの鼻」
今から何百年か後、人類から鼻がとれる、という話を聞いた『私』。
『私』には、秘密があった。結婚する前に鼻の整形手術を受けていた。
だんだん鼻がずれてきて、痛くなってきた。もう限界は近い。しかしお金がいる。
ゴーゴリの<鼻>、芥川の<鼻>を折りまぜ、『私』と夫の探りあいは続く・・・・。

これが一番面白かったかも。
読みづらいと言えば読みづらいんだけど、ラストで思わず笑いが。
「ほら。言ってくれなきゃわからない。いくらかかるの?コワリョーフがぐらついたシリコンプロテーゼを取り出して、六ヶ月間鼻を休ませて、それからちゃんと入れなおすのに、いくらかかる?」
「取り出すのに十万円。入れなおすのに五十万円。でもコワリョーフには花屋のパートで貯めたけそくりがあるから、あと四十五万円あれば足りるの」
私は堪えきれなくなって泣き出した。
かわいい。素敵な夫婦じゃないですか。


平山瑞穂/「会ったことがない女」
あらすじを書くのに疲れてきた・・・・。感想だけ。
あまり好みの話ではなかった。どこかで見たことがあるような設定。
それにしても、唐津としてしまう悠里って・・・そんなに簡単にできるものなんですか。


豊島ミホ/「瞬間、金色」
これもちょっと読んでてつらい感じが。
ナナミとシンジュの友情の話。
けれど、二人は友だちにならなかった方が幸せだったかもしれない。
シンジュをいじめる井川って子も、高校に入ってまでまだ続ける?幼いなぁ。
大人になって落ち着いて、大事なものもできて、ナナミとシンジュは幸せを感じているようだけど、私は読んでいてこれでよかった、とはそんなに思えず。
髪を染め、いじめられ、遅刻や早退を繰り返し、普通に進学も就職も出来なかった子の気持ちは、私には分からないということなのかな。
豊島さんには分かるのだろうか。


伊坂幸太郎/「残り全部バケーション」
伊坂さんが苦手な私としては、楽しめた方だと思う。
親の離婚で解散することになった早坂家、最後だから秘密の暴露をしようと言い出した母。
かなりいい味出してる。
でもラストはなぁ。
岡田さんのことを考えると、さすがに「面白かった」で終われない。ブラック〜。
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「いのちのパレード」 恩田陸

恩田 陸
実業之日本社
¥ 1,575
(2007-12-14)

JUGEMテーマ:読書
 内容紹介
<あの黒い表紙、強烈な帯コピー、シンプルかつ洗練されたデザイン。手に取った時の、嬉しいような怖いようなおののきを今でも覚えている。(中略)かつて「幻想と怪奇」というジャンルのくくりでお馴染みであった、奇妙でイマジネーション豊かな短編群には、今なお影響を受け続けている。あの異色作家短篇集のような無国籍で不思議な短編集を作りたい、という思いつきから連載をさせてもらった>(あとがきより)。

恩田ワールドの原点<異色作家短編集>への熱きオマージュ。ホラー、SF、ミステリ、ファンタジー……クレイジーで壮大なイマジネーションが跋扈する、幻惑的で摩訶不思議な作品集。

モダンホラー?奇妙なストーリーの短編集。
『奇想短編シリーズ』という連載だったとのこと。
私の苦手分野だが、思っていたよりも大丈夫で楽しめた。予想外。
それにしても恩田さんの発想には驚かされる。
よくもまぁ、これだけいろいろなシチュエーションを思いつくよ。

以下、簡単に各話の感想を。

・観光旅行
 巨人の手が生えてくる村の話。苦手系。

・スペインの苔
 一番理解できなかった。これは嫌い。

・蝶遣いと春、そして夏
 幻想的。蝶と死を結びつけて考えている?ちょっと朔太郎を思い出した。

・橋
 これもよく分からない。説明なしで進んでいくあたり、「エンドゲーム」に似ている。そこが面白いのかも。

・蛇と虹
 流し読み

・夕飯は七時
 うーん、恩田さんらしい!子供が想像するようなことを膨らませて小説にしてしまった!これは楽しめた。
 言葉から連想・想像したことが、実像となって現れる。くしゃみで消えるから、コショウを常備している三兄妹。
 「ごくらくとんぼ」で不意打ちをくらうところが笑える。

・隙間
 怖い。怖いのはやっぱり苦手。
 誰もが意識したら怖くなりそうな『隙間』。ベタな設定で一本書いてしまう恩田さん、さすが。

・当籤者
 ロト7に当たった。当籤期間は二週間。その間に当籤者を殺しても罪にならない。
 面白い設定だが不明な点が多くない?
 当たるのが怖いのに買うの?それとも全国民が対象?
 ずっと繰り越しって、受け取らないのになぜそんな籤があるの?

・かたつむり注意報
 飛ばし読み。よく思いつくなーとは思った。

・あなたの善良なる教え子より
 超ブラック。この先生は、送られてきた薬を使うのだろうか。

・エンドマークまでご一緒に
 不条理もの。日常がミュージカルに!
 奇妙だけど怖さがないので、私は安心して読めた。乾いた明るさって感じ。

・走り続けよ、ひとすじの煙となるまで
 池上永一が長編にしそう。

・SUGOROKU
 怖いけど気になるー。そこでやめないで続きを!

・いのちのパレード
・夜想曲
 飛ばし読み


とにかく、こういう系の小説は基本苦手なので、ポイントをはずした読み方をしているような。
けれどそれなりに楽しめました。
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「でかい月だな」 水森サトリ

水森 サトリ
集英社
¥ 1,470
(2007-01-06)
コメント:つかみどころのない物語。なのに惹き付けられました。

JUGEMテーマ:読書

出版社/著者からの内容紹介
宇宙的スケールの青春小説。
満月の夜、友人に崖から蹴り落とされた「ぼく」。命は助かったが、右足に大怪我を負う。そんな「ぼく」の前に、二人の変人科学オタク・中川と邪眼を持つオカルト少女・かごめ、そして「やつら」が現れる…。第19回小説すばる新人賞受賞作。

内容(「BOOK」データベースより)
ある満月の夜、友人に突然崖から蹴り落とされた中学生の「ぼく」。一命はとりとめるが、大好きなバスケットボールができない身体になってしまう。加害者の友人は姿を消し、入れ替わるように「ぼく」の前にあらわれたのは、インチキ錬金術師、邪眼を持つオカルト少女、そして「やつら」。そのうちに、世界は奇妙な「やさしさ」につつまれてゆき、やがて、地球のみんながひとつに溶け合おうとする夜がくる…。第19回小説すばる新人賞受賞作。 

あらすじは上記引用の通りなのだが。
事前にあらすじを読んではいなかったので、話が進むにつれて、自分が思っていたのとポイントがずれていく不思議な感じを味わった。
その感じをどう捉えるかで、好き嫌いが分かれそう。
物足りなさもあるけれど、私は好き。特に中川。

『沢村幸彦・・ユキ』こと『ぼく』は、友人綾瀬に崖から蹴り落とされ、以前のようにはバスケットができない体となってしまった。
意識を失う直前の記憶は、綺麗な銀色の月。満月だった。
綾瀬は「でかい月だな」と言った・・・・・

なぜ蹴り落とされたのか。
綾瀬は警察に、「どうして蹴ったのかわからない」と供述したという。
助け出されるユキを見て、ガタガタと震えながら泣いていたという綾瀬。
それを聞いて、ユキの心は静まった。
あの綾瀬が泣いたのだ。それならばいい。今はもうじゅうぶんだ。

しかし家族はそうは思わない。
友人たちも皆綾瀬を責める。
それを聞くと、庇わずにはいられない気持ちになって、綾瀬を庇うユキ。
そのうちに学校では、ユキがホモだという噂が流れる・・・・・。

ユキは13歳にしては、大人びている。
綾瀬に対する気持ちもそうだし、家族に対しても気持ちもそうだ。
普通、なかなかそこまでは考えられないよ。
綾瀬を憎み、自分をかわいそうだと思う家族に対し、
ぼくの家族はぼくなどが到底及びもつかぬほどに被害者だった。だとすれば、加害者はこのぼくだ。このひと達はぼくのために苦しみ、憎しみに心を歪めている。
と後ろめたくなって詫びるのだ。
綾瀬は友達だったのだから。

物分りがよすぎるじゃないの?と思ってしまうのは家族も、そして読んでいる私も同じ。
しかしそんなに簡単なことではなく、ユキの心は複雑だった。
綾瀬を庇うことでしか、いじけ狂いそうになる心をまっすぐに保てなくなっていた。 
今はまだ保留にしている綾瀬以外の、誰のことも好きじゃなかった。いつの日かぼくは綾瀬のことも憎み、最後に自分を憎んで、本気で日本列島を水没させたくなるのだろうか。

・・・というのが冒頭で、ユキの心の成長を描いて最後には綾瀬と対面して、乗り越えて終わるのかな、と思いつつ読んでいた。
家族とのことも、皆相手を思いやっているのに、簡単ではなさそうだな、と。

そして一年留年したユキは、2年生となって復学する。
『変てこな科学オタク』中川と知り合いになる。
私は中川が一番好きになった。
錬金術同好会の会長で、成績は飛びぬけて優秀。
旧理科準備室・・・別名中川ラボで、植物通信機なるものを作っている。
留年しているユキに対しても、目下の人間を扱うように話す中川。
どうやら中川は、ユキを迷い犬のようだと思っているらしい。

クラスには邪眼を持つと言われている変人、横山かごめがいた。
かごめは常に左目に眼帯をしていた。
そしてユキを嫌っていた。

中川との日々、クラスでの日々、そしてその中に家族とのやはり理解し合えないエピソードが挟まれる。
いつもユキは苦悩しているような。
支えになるべき家族と、お互い分かり合えない生活って、中学生にはつらいだろう。
そんな中で、変人中川との交流がほのぼのする。
中川の妹とか父親とかは、なんか半端で邪魔なエピソードのような気もしたけど。

と、ストーリーが進んでいく中、時折差し挟まれるのが夢の話。
私は思いっきり流して読んでいたので、まさかそんな重要なポイントだとは・・・とびっくり。
確かに、『やさしさブーム』など、不思議な現象は起きていたんだけど、上記のような冒頭からまさか不思議系に発展していくとは思わないでしょう?
いよいよこれは・・・?と思ったのは、水島ヤスのエピソード。
おちゃらけキャラのヤスが、教師のモノマネをしたところ、クラスの皆は笑うどころか正義の怒りまでにじませたのだ。
そこでユキは恐怖を覚える。
これは『やさしさ』ではない。『協調』ブームだったのだ。みんな一緒。特別を許すな。
そこでヤスと話し合う。
ネットなどで話題になっているという『キャラバン』。
宇宙の彼方から、キャラバンの鈴の音が聞こえて来る。キャラバン隊はもうすぐ地球の上空までやって来る。その時、地上から全ての悪と争いが消え、人類は愛と平和に包まれるでしょう。
共鳴してしまうと、協調ブームの波に飲み込まれてしまう。
そんな話をするとヤスは最後に言う。
「ユキどん、先に眠るなよー。おいら修学旅行やなんかで、いつも最後まで眠れなくってネ。ひとりぼっちで菊みんなの寝息が怖いのよ」
このセリフがちょっと怖い。ゾクっとする。
と思ったら翌日には、もうヤスは飲み込まれてしまっていた・・・・・。

うわっほんとにソッチの話なんだーと、もう覚悟した。
けど、ユキがかごめのことを好きになったり、綾瀬と再会したり、細かくいろいろ入れてくるんだなー。
まあ、綾瀬と会わないことにはユキも乗り越えられないと思ったけど、中川が最後存在薄くなってしまったのが残念。
ラストはちょっと切なかった。

不思議な不思議な、若干消化不良だけれども、私には何か魅力のある物語だった。
よかったです。
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