その傍で本を読むのは

読んだ本の感想とか、小学校での読み聞かせのこととか。
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「でかい月だな」 水森サトリ

水森 サトリ
集英社
¥ 1,470
(2007-01-06)
コメント:つかみどころのない物語。なのに惹き付けられました。

JUGEMテーマ:読書

出版社/著者からの内容紹介
宇宙的スケールの青春小説。
満月の夜、友人に崖から蹴り落とされた「ぼく」。命は助かったが、右足に大怪我を負う。そんな「ぼく」の前に、二人の変人科学オタク・中川と邪眼を持つオカルト少女・かごめ、そして「やつら」が現れる…。第19回小説すばる新人賞受賞作。

内容(「BOOK」データベースより)
ある満月の夜、友人に突然崖から蹴り落とされた中学生の「ぼく」。一命はとりとめるが、大好きなバスケットボールができない身体になってしまう。加害者の友人は姿を消し、入れ替わるように「ぼく」の前にあらわれたのは、インチキ錬金術師、邪眼を持つオカルト少女、そして「やつら」。そのうちに、世界は奇妙な「やさしさ」につつまれてゆき、やがて、地球のみんながひとつに溶け合おうとする夜がくる…。第19回小説すばる新人賞受賞作。 

あらすじは上記引用の通りなのだが。
事前にあらすじを読んではいなかったので、話が進むにつれて、自分が思っていたのとポイントがずれていく不思議な感じを味わった。
その感じをどう捉えるかで、好き嫌いが分かれそう。
物足りなさもあるけれど、私は好き。特に中川。

『沢村幸彦・・ユキ』こと『ぼく』は、友人綾瀬に崖から蹴り落とされ、以前のようにはバスケットができない体となってしまった。
意識を失う直前の記憶は、綺麗な銀色の月。満月だった。
綾瀬は「でかい月だな」と言った・・・・・

なぜ蹴り落とされたのか。
綾瀬は警察に、「どうして蹴ったのかわからない」と供述したという。
助け出されるユキを見て、ガタガタと震えながら泣いていたという綾瀬。
それを聞いて、ユキの心は静まった。
あの綾瀬が泣いたのだ。それならばいい。今はもうじゅうぶんだ。

しかし家族はそうは思わない。
友人たちも皆綾瀬を責める。
それを聞くと、庇わずにはいられない気持ちになって、綾瀬を庇うユキ。
そのうちに学校では、ユキがホモだという噂が流れる・・・・・。

ユキは13歳にしては、大人びている。
綾瀬に対する気持ちもそうだし、家族に対しても気持ちもそうだ。
普通、なかなかそこまでは考えられないよ。
綾瀬を憎み、自分をかわいそうだと思う家族に対し、
ぼくの家族はぼくなどが到底及びもつかぬほどに被害者だった。だとすれば、加害者はこのぼくだ。このひと達はぼくのために苦しみ、憎しみに心を歪めている。
と後ろめたくなって詫びるのだ。
綾瀬は友達だったのだから。

物分りがよすぎるじゃないの?と思ってしまうのは家族も、そして読んでいる私も同じ。
しかしそんなに簡単なことではなく、ユキの心は複雑だった。
綾瀬を庇うことでしか、いじけ狂いそうになる心をまっすぐに保てなくなっていた。 
今はまだ保留にしている綾瀬以外の、誰のことも好きじゃなかった。いつの日かぼくは綾瀬のことも憎み、最後に自分を憎んで、本気で日本列島を水没させたくなるのだろうか。

・・・というのが冒頭で、ユキの心の成長を描いて最後には綾瀬と対面して、乗り越えて終わるのかな、と思いつつ読んでいた。
家族とのことも、皆相手を思いやっているのに、簡単ではなさそうだな、と。

そして一年留年したユキは、2年生となって復学する。
『変てこな科学オタク』中川と知り合いになる。
私は中川が一番好きになった。
錬金術同好会の会長で、成績は飛びぬけて優秀。
旧理科準備室・・・別名中川ラボで、植物通信機なるものを作っている。
留年しているユキに対しても、目下の人間を扱うように話す中川。
どうやら中川は、ユキを迷い犬のようだと思っているらしい。

クラスには邪眼を持つと言われている変人、横山かごめがいた。
かごめは常に左目に眼帯をしていた。
そしてユキを嫌っていた。

中川との日々、クラスでの日々、そしてその中に家族とのやはり理解し合えないエピソードが挟まれる。
いつもユキは苦悩しているような。
支えになるべき家族と、お互い分かり合えない生活って、中学生にはつらいだろう。
そんな中で、変人中川との交流がほのぼのする。
中川の妹とか父親とかは、なんか半端で邪魔なエピソードのような気もしたけど。

と、ストーリーが進んでいく中、時折差し挟まれるのが夢の話。
私は思いっきり流して読んでいたので、まさかそんな重要なポイントだとは・・・とびっくり。
確かに、『やさしさブーム』など、不思議な現象は起きていたんだけど、上記のような冒頭からまさか不思議系に発展していくとは思わないでしょう?
いよいよこれは・・・?と思ったのは、水島ヤスのエピソード。
おちゃらけキャラのヤスが、教師のモノマネをしたところ、クラスの皆は笑うどころか正義の怒りまでにじませたのだ。
そこでユキは恐怖を覚える。
これは『やさしさ』ではない。『協調』ブームだったのだ。みんな一緒。特別を許すな。
そこでヤスと話し合う。
ネットなどで話題になっているという『キャラバン』。
宇宙の彼方から、キャラバンの鈴の音が聞こえて来る。キャラバン隊はもうすぐ地球の上空までやって来る。その時、地上から全ての悪と争いが消え、人類は愛と平和に包まれるでしょう。
共鳴してしまうと、協調ブームの波に飲み込まれてしまう。
そんな話をするとヤスは最後に言う。
「ユキどん、先に眠るなよー。おいら修学旅行やなんかで、いつも最後まで眠れなくってネ。ひとりぼっちで菊みんなの寝息が怖いのよ」
このセリフがちょっと怖い。ゾクっとする。
と思ったら翌日には、もうヤスは飲み込まれてしまっていた・・・・・。

うわっほんとにソッチの話なんだーと、もう覚悟した。
けど、ユキがかごめのことを好きになったり、綾瀬と再会したり、細かくいろいろ入れてくるんだなー。
まあ、綾瀬と会わないことにはユキも乗り越えられないと思ったけど、中川が最後存在薄くなってしまったのが残念。
ラストはちょっと切なかった。

不思議な不思議な、若干消化不良だけれども、私には何か魅力のある物語だった。
よかったです。
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